犬塚勉画家のリアリズム

自然、それも何気ない風景、例えば私の母の実家の
お墓参りに行く途中の風景とそっくりな道。


思わず歩きたくなるような風景だ。

雑草と言う名の草花はないと昭和天皇の名言とおりに
葉っぱ1本づつ、ヒメジョオンの花びら1枚づつ面相筆で
描いてある。

スケッチばかりでなく、写真ばかりでなく、図鑑まで駆使して
リアリズムの追求をしていたそうだ。

石ひとつでも皆違う顔を持ち趣があるという。

この人の絵には見ている自分が入り込んで
完成するという感がある。


絵を描くために山登りをしていて急変した天候不順に

力尽きて山頂で亡くなった。

1日3時間の睡眠時間で充分だ。とノートに記してある。

いかに自然と一体化しそのままを絵として皆を魅せるような
絵を描きたい。

それだけを目的に描き続けた。

犬塚勉(1949-1988)

奥多摩に住み、小学校や中学校の美術教師をつとめながら、
学校の美術準備室をアトリエに作品を描き続けた。
去年、没後20年を機に何度か展覧会が開かれて以来、
静かな話題を呼んでいる。
その特徴は、写真と見まごうほどのリアリズム。
しかし、あまりにも精ちな筆づかいで表現された細部からは、
写実を突き破らんばかりの思いが伝わってくる。
犬塚は、厳しいランニングを日課にし、自然食に切り替え、
身も心も鍛え抜いた飾り気のない人間になって、
ようやく草や木が描けると考えていた。自然と一体となったときに
初めて感じられる命をとらえようと、何十回も登山や沢登りを
繰り返して自らを突きつめた。そして1988年9月。
「水が描けない、もう一度水を見てくる」と言い残して谷川岳で遭難、
帰らぬ人となった。38歳だった。